【「逆マタハラ」に挑むドラマ「転職の魔王様」】
昨年のドラマの話題で恐縮ですが、「転職の魔王様」というドラマはご覧になりましたか?
その中で、子どものいる人からの仕事のしわ寄せに悩む女性の転職を取り上げていました。
私は自分がキャリアコンサルタントとして転職支援に携わっていたこともあったので、キャリコン仲間に進められてNetflixで見ました。
くだんのドラマは、第7話「人も会社も、いつだって変わることができるんです」。
あまり好きではない言葉ですが、タブーである「逆マタハラ」を取り上げるんだ…と、驚きを感じました。
当時、話題にもなったようですね。
まずご覧になっていない方にあらすじのご紹介を。
▼第7回のあらすじ
転職支援を手掛ける「シェパード・キャリア」がドラマの舞台。
新人キャリアアドバイザー未谷(ひつじだに)千晴は、先輩の来栖嵐のもとで修業中。
ひょんなことから、来栖のもとを離れ、ワーキングマザーである別の先輩の広沢英里香と一緒に組むことに。
そこで、前職は製薬会社でMRをしていたとい皆川晶穂という女性の転職相談を担当することになります。
面談の際に、広沢は候補企業を示しながら、「産前産後休暇や育児休暇が充実」「私も子育て中なのでこういう会社、とってもいいなって思います」と勧めますが、皆川は複雑な表情を浮かべます。
そして広沢がワーキングマザーであることを知って、担当を変えるように依頼してくるのです。
いろいろ探った結果、皆川の退職は、先輩の日下部さやかの産休に伴って、その業務を一手に引き受けたことが引き金になっていたことがわかります。
日下部が復帰しても業務に忙殺されます。
上司に相談しても取り合ってくれません。
しかし、「活躍する女性」として取り上げられるのは、ワーキングマザーである日下部さやかのほう。
ついに限界を感じ、皆川は退職することを決意したのです。
広沢に変わって、担当することになったのは来栖。
来栖は、皆川に意外な提案をします。それは、元いた会社に戻るというものでした。
ドラマでは、皆川が去った後、「このままではいけない」と、ワーキングマザーの日下部が立ち上がり、上司を巻き込んで業務や体制の見直しが進むという展開になりました。
こうした変化の見られる会社だからこそ、来栖は戻ることを提案したのです。
迷う皆川に、来栖は問いかけます。
「つらいと思ったときに、どのくらい真剣に会社や上司に伝えたでしょうか?」
▼個人の努力ではどうしようもない課題
皆川や、その会社、そして子どものいる日下部の様子に、「あるある」と共感を覚えながら見ていた私は、来栖のこのセリフには違和感を覚えました。
事態が改善されなかったことの責任を皆川個人に帰すように聞こえたからです。
一社員であった皆川に、それを期待するのは無理があるのではないでしょうか。
一方で来栖の言葉は一面の真実を捉えているとも感じます。
子育ての苦労は、世の中で理解されつつある一方、子育てしていない人の職場での現状や抱えている思いは知られていません。
当事者が声を上げてこなければ知られないままです。
なぜ声を上げていないかというと、「不満を言うべきではない」と押さえる心理が働くからではないでしょうか。
その背景には、「子育ては尊重されるべきだ」という社会的規範の影響や、マタハラと言われることを恐れる気持ちがあります。
子どもがいないことに引け目を感じていれば、それが枷になって思ったことが言えないこともあるでしょう。
大きな声を上げるには、こういった心の中にある枷を外さなくてはなりません。それには、当事者同士が集まって、声を一つにするといったことが必要なのだと思います。
WINK代表理事の私は、かつて職場で「肩身の狭い思い」をしている人の実態調査を発表しました。
その調査結果が、WINKを立ち上げる理由の一つでもありました。
現在、その第二弾の調査を行っています。「しわ寄せ」を「しあわせ」にするにはどうしたらよいか、提言につなげられたらと考えています。
結果については追ってご案内します!