「父ではありませんが 第三者として考える」 武田砂鉄氏(著)

2023.07.11

#武田砂鉄#父ではありませんが

「男性の子育てが、まだまだ特例的に語られるように、子供を育てていない自分にどうしてあなたが子育てを語れるのか、と迫ってくる声も特例的である。だが、女性は、この、どうしてあなたが、の直撃をたびたび受ける。何度も受けているうちに防衛能力がつき、そうではない立場を確立していく…」
(「父ではありませんが 第三者として考える」(武田砂鉄)より引用)
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今日、ご紹介するのは「父になれなかった」立場から語られている本からの一説です。
6月は「父の日」までに読み終えてご紹介したかったのですが間に合わず…やっと読み終えました💦

「父の日」は、「母の日」と比べると、やや地味な印象があるのは私の偏見ではなく、実際に発祥の地、アメリカでも普及まで何年もかかったのだそうです。
その背景には、「子どもの世話をするのは”母”」「女性は母親になりたいのが普通」という既成概念が影響していると思われます。

女性の立場から、子どもを持つ、持たないことを語る本は増えてきているし、読者が多いのも、そうした風潮を反映しているものと思われます。そう考えると、「父にならなかった男性」の立場から語られているというだけで、非常に貴重なものに思えます。
この本では、そういった世間での男女に対する「親」であることの期待の違いについても触れています。

さらに、「第三者から語る」ということを大事にしているのも興味深い点です。
「子どもがいない人にはわからない」という言葉はもちろん、「子どものために未来をよくしたい」という言葉は、その意図はないにしろ「子どものいない人は未来をよくしたいと思っていない」かのように聞こえます。でも、当事者ではないと語ってはいけないのでしょうか?

「人はみんな何かしらの当事者であり、当事者でない」と武田氏は言います。当事者ではないから、と、何かについて意見を述べることを圧迫するのは理不尽だし、引け目を感じて口を紡ぐ必要もありません。これはこの本以外で読んだことですが、第三者からの意見がクリエイティブ性を高めるという研究報告もあります。

WINKのイベントにも男性が参加くださることも増えてきました。子どものいる・いないについて、多様な立場で語り合える世の中にしていきたいなあと、改めて思った本です。

(6月25日 一般社団法人WINK Facebookページ記載)