【レポート】★まちごと万博企画 ★「誰もが働きやすい職場をつくるには ~子どものいる・ いないを越えて~

2025.11.13

#まちごと万博#大和リース#大阪・関西万博

9月30日に大阪の淀屋橋にて、「誰もが働きやすい職場をつくるには」と題したイベントを開催いたしました。
大阪・関西万博に連動して展開された「まちごと万博」の企画の一環として行われたこのイベント。共催は、大阪で働く女性同士のネットワークづくりに取り組む「サクヤワーキングコミュニティ」さんです。

第1部は、大和リース株式会社の上席執行役員 佐伯佳夫様にご登壇いただき、育児休業を取得した職員の仕事を代わりに支えた従業員にボーナスを分配する「サンキューペイ制度」の導入の意図や背景についてお話をうかがいました。

続く第2部では、佐伯様等にも加わっていただき、ワールドカフェ形式で大和リース様の制度について対話を行いました。大和リース様のお話は、参加者の興味関心を掻き立てたようで、時間を忘れたように熱心に話し合いが行われました。

大和リース様の事例は、既に多くのメディアに取り上げられていますが、大阪を拠点とする会社ということは、あまり知られていないのではないでしょうか。大阪発の「働きやすい職場づくり」に取り組む事例としてぜひお話を伺いたいと思い、「まちごと万博」の枠組みでの登壇をお願いしました。

以下、内容についてご報告いたします。

■第1部 基調講演「子育て社員のフォローにボーナス~サンキューペイ導入のねらいと効果~」

以前に私が子どものいない社員の職場での「肩身の狭さ」について実態調査を行った際に、「業務カバーの負荷が大きいにもかかわらず、その貢献度合いが認められていない」という声が多く、この点に課題意識がありました(調査概要:「弁護士ドットコムニュース」2020年9月16日 、日経新聞「子育て社員への支援も評価せよ」2024年6月5日(会員限定記事)

大和リース様でも同様の課題意識からサンキューペイ制度が導入されたのかと考えていたのですが、その予想は良い意味で覆されました。

育休中社員とその業務のカバーする社員のしわ寄せという課題への対策という面がないわけではないでしょうが、この施策が目指すのは「エクイティ(公平性)」の実現であり、さらには「女性活躍推進」であるとのこと。組織全体や社会に広がるような高い視座に立った施策であるとお話を伺って感じました。

<「エクイティ(公平性)」実現のための施策導入>
冒頭に、「私も子供はいないのですが、いろいろな人が組織にはいますね」と口火を切られた佐伯さん。大和リース社では、子どもの有無も含めて、多様な社員がそれぞれに応じて多様な働き方の選択肢を持てることが「エクイティ(公平性)」と定義し、時間や場所の制約のない働き方である「フレキシブル&モバイルワーク」や、男性の育休機関に応じてボーナスを支給する「エンジェル奨励金」といった各種制度を導入してこられました。

そこには、「“両立”とは時間配分である」いう基本的な考えがあります。つまり、女性の活躍を阻害しているのは、能力不足ではなく、子どもがいる場合は育児に追われて時間を捻出できない現状にあるとお考えです。時間捻出は労働者個人が行うが、それを支えるために多様な支援制度を準備することが会社の役割だと、佐伯さんはおっしゃいます。

<エンジェル奨励金制度――夫婦で育児をシェアし「時間配分」の選択肢を広げる>

大和リース様では、これまで女性側に偏りがちだった育児負担のバランスを見直し、夫婦間での家事・育児のシェアを推進することで、女性の時間的、精神的負荷の軽減を図ってこられました。その代表的な施策が「エンジェル奨励金」です。

この制度は、前述したように、子どもが誕生した社員を対象に、男性側の育児休業取得日数に応じてボーナスを支給する制度です。導入されたのは2015年からですが、2023年に内容が大きく改訂されました。

当初は子どもの数が増えるにつれて、子供一人当たりのボーナス額が増えるというものでした。が、2023年からは、「男性の育児休業取得日数」に応じた段階性に改訂されました。パートナーである男性が育児の分担を増やすことで、女性の時間的余裕の増加を狙いとしています。

たとえば、夫の取得する育休が30日未満は30万円ですが、90日以上取得した場合は第1子から100万円が支給されます。加えて女性が自社社員であれば、夫の勤務先は問わないという太っ腹ぶり。思わず会場から驚きの声が上がりました。

「夫婦で育児や家事をシェア」のためにさらにきめ細かな仕組みが用意されています。「エンジェル奨励金」の申請には、家庭内での家事・育児分担を可視化した大和リース様独自様式の「家事・育児シェアシート」の提出が必須とされています。夫が育休中に本当に家事・育児の役割分担をしたのかを可視化することで、実効性あるものとなります。
「女性の働き方を支えるために男性も変わる」という姿勢を制度で後押しする大和リース様の取り組みは、まさに“本気の女性活躍推進”を体現しているといえるでしょう。

<サンキューペイ制度――「支えた人」を見える形で承認する>

男性育休推進に力を入れた結果、3カ月以上の育休を取得する人が50%を超えるようになりました。その一方で、各職場からは人手不足と、それをカバーする負担への懸念の声が増えてきました。そこで導入されたのが、WINKとして最も関心を持っていた「サンキューペイ制度」です。読んで字のごとく、「産休応援」と「サンキュー」の二つの言葉をかけたネーミングです。

この制度は、育児休業を取得した社員の仕事を代わりに支えた同僚やチーム(正社員のほか契約社員などを含むすべての従業員が対象)に対し、その支え度合いに応じた手当を支払う制度です。つまり「休む人」ではなく、「支えた人」にも焦点を当てて感謝を伝える制度であり、“しわ寄せ構造”を「お互い様」に変えるのがそのねらいです。

支える側の業務を承認するだけでなく、「職場の他の人に悪い」という気兼ねから生まれる育休取得のハードルを取り除く効果も期待できます。

さらに、大和リース様の特徴は、支給される金額について上司が各人の貢献度を評価して決めるという点です。また、手当の原資は、育休社員に支払われる予定だった賞与を再分配することを明言されています。そうすることで、サンキューペイの手当が「育休者から」であることを明らかにできます。

もともとは育休社員に支払うボーナスを、職場の他のメンバーに振り分けているので、会社からの余分なコストは発生しません。「人が欠けたのに仕事の成果が従来通り上がっているなら、会社がそこにペイを支払うのは当然」と佐伯さんはおっしゃいます。

また、サンキューペイ制度を適用する場合は、育休当事者と他の職場メンバーは、綿密に引継ぎを行っており、引継ぎ用の基本フォーマットも準備されています(利用は各職場の任意)。誰がどの作業をどの程度、引き継ぐのか、その作業を行うことで業務の見直しにもつながっているようです。

「営業などの成果に対する評価はどうなっているのか?カバーし合っていると、成果の取り合いなどにはならないのだろうか?」という疑問を抱く人もいらっしゃるかもしれません。そのことについて質問も出ました。

大和リース様では、「チーム制営業」を導入されました。これまで営業職はひとりで顧客を担当し、成果も個人実績として計上するのが基本でしたが、現在は複数のメンバーでチームを組み、各人の受注額は複数で計上することも可としているのだそうです。

「この方法であればお互いに補完することで時間的制約のある人も活躍できますし、若手は先輩の仕事ぶりから学ぶこともできます。また個々の得意分野を組み合わせることで、ひとりでは取れなかった案件にもチャレンジできます。これからは、一人ひとりの長所を活かすことをさらに推進したいと考えています」と佐伯さんは語られます。

こうした施策等の成果として、男性の3か月以上の育児休暇取得は、2023年に35.3%、2024年には52.0%と半数を超えるようになりました。

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◆質疑応答

基調講演を受けて、質疑応答の時間に移りました。以下のような質疑が交わされました。

Q1 社員のニーズを取り込んだ施策と感じたが、社員の声をどのよう反映していのでしょうか?

A1 大和リースには労働組合がないが、その代わりに「人事部インクルージョン推進室」という組織で社員の声を聞くようにしています。メンバーは原則2年任期の公募制で、兼務の社内複業者15名から成り、各職場からの声を吸い上げて施策に反映しています。もともと2007年のダイバーシティ推進のプロジェクト発足から取り組みは始まり、2013年に「ダイバーシティ推進室」、2018年4月に「人事部インクルージョン推進室」に名称変更を行ってきました。

 

Q2 施策は素晴らしいが、現場の管理職の反発はなかったのか?どのように対応したのでしょうか?

A2 イクボス教育を10年以上取り組んできていて、部下が働きやすく活躍できるようにという自覚は浸透していると思います。「イクボス10か条」のカードを全員が携帯して、何かあった時に参照できるようにしています。また部下からの上司の評価も行っています。

 

Q3 サンキューペイ制度が適用されるのは育児中社員がいる場合のみですか?たとえば介護休職は対象にされるのでしょうか?

A3 目的が「女性活躍推進」なので、育休の場合のみに絞っています。他に拡大する予定はありません。

【レポート2に続く】