7月1日放映の「子どものいない人生」を取り上げたNHKの情報番組「あさイチ」をご覧になった方も多かったのではないでしょうか。
今回は、6月にOESDが発表した「生涯無視率」の数字が、先進国の中で日本が突出した数値であったものを受けたものでした。
さまざまな当事者の声を取り上げる中、私が特に印象に残ったのは、ゲストのエッセイスト吉田潮さんが、「女性たちは主語を奪われてきた」とおっしゃったことです。
女性が「産む」役割を担う社会構造の中で、「子どもを持つことを喜ぶべき」であり、もしその役割を全うできない場合は「一人前でない」とされる社会規範が根強くあります。そうした規範の下では「子どもを持ちたくない」とは言えない。もっと言えば、「子どもを持ったことを後悔している」とも言えなかったのです。
「自分」ではなく、「母」や「妻」など「立場」からでしか語れなかったとも感じました。
実は、「あさイチ」で「子どものいない人生」を取り上げたのは初めてではありません。2017年頃にも同テーマを特集しています。当時は、雑誌「Frau」で女優の山口智子さんが「子供を持たない人生を歩む」と宣言した記事が話題になり、それを受けたものでした。当時、同番組のキャスターを務めていた有働由美子アナウンサーが、未婚でありながらも「子どものいない人生」に急激に焦りを覚えて不妊治療をしたという赤裸々な体験談を語ったことも話題となりました。
山口智子さんのインタビュー記事が、驚きと共に共感をもって迎えられたのは、まさに彼女自身が自らの言葉で自分について語ったからです。
いま振り返ると、彼女のインタビューが契機となって、子どものいない人生についても語る人が急激に増えた気がします。それは、子どもがいないことで「母」や「父」になれなかった人が、立場ではない自分を語る言葉を取り戻した経緯といえるのではないでしょうか。
奇しくも、朝ドラ「虎に翼」の主人公、寅子(ともこ)が「おかしいと声を挙げた人の声は決して消えない。その声が、いつか誰かの力になる日がきっと来る。私の声だって、みんなの声だって、決して消えることはないわ。」と語りました。
一般社団法人WINKも、子どものいない当事者として声をあげていくことに、今後いっそう、力を入れたいと思っています。